刀剣×情報系 刀剣自由研究展

刀剣×情報系Webオンリーイベント刀剣自由研究展の企画ページです。

情報系まとめ作成者に聞く!(vol1:セツカ)

少し前に、情報系のまとめを作っている方々に聞いてみたいことというのをマシュマロで募集してみました。
そして、実際に情報系まとめを作ってる方々に向けてアンケートをとりました。
アンケートといっても集計結果をまとめるような性質のものではありませんので、一人分ずつ公開していこうと思います。
ということでしょっぱなは主催のセツカからお送りします。

なお、アンケートフォームはこちらに。
今からでも答えてみようかなという方がいらっしゃいましたらぜひどうぞ。
刀で情報系本/ネップリを作っている方に聞いてみる


名前

セツカ

出している本/ネップリの主な傾向やコンセプトを教えてください(刀の調査/刀以外の調査/旅行記 等)

自身で調べたテーマとしては、刀工国広についての言説を収集・整理したものをまとめました。
他、刀剣周辺をテーマにしたアンソロジーの主催をしています。

あなたのテーマ周辺で、浅く広く系のおすすめ本をMAX5冊くらいまで教えてください
  • 図説・日本刀大全
  • 図説・日本刀大全2
  • もっと知りたい 刀剣 名刀・刀装具・刀剣書
  • 刀に生きる 刀工・宮入小左衛門行平と現代の刀職たち
  • 日本刀の鑑賞基礎知識
あなたの調べているテーマに該当する、深くコアな内容のおすすめ本をMAX5冊くらいまで教えてください
調査を始めたきっかけを教えてください

刀そのものについて興味を持ったのは、2016年、岐阜歴史博物館で行われた徳美所蔵品展で本作長義以下略を見て目を奪われたこと。
ちょっと怖い、でも見たい、とうだうだしながら、一時間くらい行ったり来たりしていたような。
それまで刀身に対して興味はなかったのに、完全にぐらっときて、これは見方を知りたいなとなったのです。
ちなみに、そのときの目当ては、家康所用品を復元したきんぴかうさちゃんの着物でした。
(なお、そのときの展示は、たとえかぶりつきでメモをとっても迷惑にならないような、がらんとした状況でございました)

深い資料をあつめるようになったきっかけは、2017年、山姥切国広展のときに、抽選方式の講座に当たったことです。
ご本の書き方が少し難しめの先生だったので、予習が必要かなと思って集めました。
私は後発組だったので、先行の方々が調べた本のタイトルは出そろっていたのです。
ただ、著作権が切れたような古いものから最近のものまで集めてみたところ、本によって書いてあることが全然違う、しかも普通の論文みたいな、先行する誰々の論でこう言っていてそれに対してどうだというような書き方をしていない、という状態で、大変混乱をしました。
結局、きっかけとなった講座そのものは、講師の方の調子がお悪かったようで、いまひとつだったのですけども、自分で調べて???となった部分は、さらに調べてみようという方向づけのもとになりました。

(ネット公開/ネップリ/本など形を問わず)発信したきっかけをおしえてください

2018年のFGOゲーム内イベント「サーヴァント・サマー・フェスティバル」をプレイして、「同人イベントにサークル参加するの楽しそうだな」となったこと。
いえ…同人イベント自体は経験あったのですよ。アナログ時代に。(ラミカとか同人便せんの時代です)
でもこう、ちゃんと本をだして、それをほしいと思ってもらいたいなと思いまして、じゃあ何をしたらほしがってもらえるのか考えたとき、できそうだなと思ったのが、あつめてきた資料のまとめだったのです。
(まあ、それまでに集めた資料だけで作るつもりだったのに、ついでにと調べているうちに資料がさらに相当量増えましたが)

集めた資料はどんな感じで管理していますか?(保管およびインデックスつけ等)

資料のコピーを、テーマ別に二穴の紙ファイルに閉じています。
コピーの一枚目には書誌情報を書いて、インデックスシールをはりつけています。
紙の本として手に入れたものであっても、ファイルの中身と同時に参照するようなものは、コピーをとって一緒に閉じてあります。

図録や本のきまった管理方法はいまのところありません。

本を作るときのざっくり手順やスケジュール感、こだわり等々を教えてください

自分単独で本を作るときには、まずは本文から進めていきます。
表紙は締切り数日前にぺぺっと。

アンソロなどで、表紙をデザイナーさんにお願いする場合には、数ヶ月前、本文がどこにもない状態のうちにデザイナーさんへの依頼を出しています。
表紙と裏表紙を早めにかためつつ、背幅はリテイク一回分という扱いで、印刷所の締切り二週間くらい前にデザイナーさんに最終依頼を。

ちなみに、国広本のときのスケジュールは、こんな感じでした。
10営業日(2週納期)の印刷所だったので、一般的な同人印刷所より締切りが早いです。

  • 2018年秋~:執筆開始
  • 2019年1月:初稿完成
  • 4月:フォロワーさんに誤字探し依頼1回目
  • 5月:フォロワーさんに誤字探し依頼2回目
  • 6/7:本文内容を確定させて、印刷所に試作版を作成依頼、試作版は6/21頃着
  • 6/24:印刷位置を調整し、最終稿を印刷所に提出
  • 7/14:イベント当日
(本)初めて本を作ったときに困ったことと、どんなふうに解決したかを教えてください

表紙原稿の作り方がわかりませんでした。
背表紙までつながったものを作るのだ、さらに塗り足しが必要なのだ、というのまではわかっても、それをソフト上どう設定してよいのか、補助線をどうしたらよいのかわからず。
そのため、ちょ古っ都さんで、表紙と裏表紙をできあがり寸塗足しなしPDFの形で入れる方法にしました。これならA5の紙一枚と同じような感じで表紙と裏表紙を作るだけです。(ちゃんと四隅は真っ白のデザインにしました)

(本)印刷所選びの基準を教えてください

安いことが第一です。
それなりの量を出してはいますが、自宅が狭く在庫を置いておけない(倉庫系を使うのも経費と売上のバランスがわからず不安)ということで、50冊程度ずつ増刷しているので、少部数向けの印刷所がよいです。
特に情報系の本は、必要なら10部でも増刷対応できるように、と思っています。
ということで、最初のうちはちょ古っ都さん、最近はおたクラブさんを愛用しています。
最近おたくらぶさんばかりになってきた理由は、書店宛に送れること、一定数ごとにぷちぷち梱包してあることで輸送時の痛みが少ないこと、同じく梱包してあることで、届いた後に取り回しやすいことです。

(本)印刷所用の原稿を作るとき、表紙と本文それぞれどのようなソフトを使用していますか?

今は、本文は一太郎、表紙は花子です。
花子便利ですよ。表紙サイズと背幅を指定してトンボを引く機能はあるし、特別版に付属してくる素材集には同人向けの素材も入ってるし。
文字を文字のまま扱うので、一度いれた文字を後から簡単に直せるのもメリットです。

あなたの資料の探し方を教えてください

刀周辺で今の観点を知りたい場合、新しい図録の参考文献になっている本から順に探します。
歴史関連であれば、当該の地域の図書館にレファレンス依頼を出してとっかかりにします。

自分自身の調査テーマである「昔の認識」の話を調べるときには、図書館の本を端から順番に手に取って、目次に探しているキーワードがあるか探していきます。
同じく国会図書館デジタルコレクションの検索窓にもキーワードをいれて、かかった資料を端から順に見ていきます。

近現代の人物について扱った、あるいは扱いを検討したことはありますか?ある場合、どのような配慮をしましたか?

公人、著名人、本や記事の著者については必要であれば名前を記載する、それ以外の場合、本当に必要なのか検討した上で姓だけを記載する、という基準を個人的に設けてあります。

伝承がたどりきれなかったとき等、資料をたどっていって、一旦行き止まりになったときにどうしますか?

たどれたところ、調べた範囲を書いて終わります。
伝承の類いって、例えばある人物についてのエピソードが、それらしい別の人物のエピソードにすりかわったりするので、ひょっとしたら全然違う誰かが自分の書いたものを見て、他の出所を教えてくれるかもしれませんし。

重要な資料の存在を教えてくれた方などはいますか?まとめる上で特別な扱いや事前のお話などしましたか?

重要、というレベルのものは特にないです。

マイナスの印象を与えるようなテーマを扱うか検討したことはありますか?どのように対応しましたか?

本を出す以前に書いた記事で、書かないと片手落ちになるような事実関係を並べたらケンカを売ってるような感じになりそうだなという状況になったことはあります。
最後にプラスの印象で終わるようにフォローを追加しました。

信頼性の低いネタは扱いますか?扱う場合には何か気をつけていることなどはありますか?

信頼性が低いことを明らかにした上で扱います。
読んだ本が、その類いの説に「何の言及もしていない」ことで、返って混乱した経験があるからです。
「従来こう言われているけれど真偽は疑わしい」というのは、明記したほうが親切と考えます。

調べてみたら予想と違ってびっくり!となったことがあればおしえてください

刀工国広についての記述で必要になるあたりの宮崎の歴史関連は意外でした。
こう、島津って一般に、おそろしいバーサーカーのイメージが強いじゃないですか。
調べるまでは、島津にやられた伊東氏は気の毒だなと思っていたんですよ。
それが調べてみたら、内部紛争ばちばちのどろどろ、島津との間も、そもそも島津を出し抜いて領土を奪い、何世代か後に同じようなことをやりかえされたような状況。
まさかどっちもどっちの状況だったとは、となりました。

まとめたことで、何か得たもの、あるいは起こった出来事、思わぬ反応などありましたら教えてください

同人誌が論文の参考文献にあがるという椿事がありました。(椿事でいいよね?これ)
橋本麻里先生に「日本美術史でこんな風に同人誌が参照された論文は初めてかな?」とか呟かれたのですけども、ひょっとして先生、タイトルで検索されたのかしら……?(うちの本じゃなくてさよのすけさんのほうの本かもですけども)
https://twitter.com/hashimoto_tokyo/status/1260540464983240707

何か補足だったり、語りたいことがあればどうぞ

同人イベント楽しいよ!
最初は、国広本だけ出したらおしまいとか思ってたはずなのに、結局2020年はかなりの閃華に参加しちゃったような気がします。
お仕事などの都合で今は参加できない方もいらっしゃるかとは思いますが、ぜひリアルのイベントを体験していただきたく。

これから調査してみる/まとめを作ってみる方に向けて一言!

「何を」元に調べてどうだったのかを明らかにして公表することで、次の誰かは調べるための手数を大幅に減らすことができます。
そうしたら次の誰かは、さらに他のことを調べられます。なんなら参考文献の厳選リストだけだって、助けになるのです。
ひょっとしたら、まとめられたことで、誰かが調べた他のテーマとの繋がりが見えてくることもあるかもしれません。
ということで、次の誰かのためにあなたの調べたことをぜひともまとめてみてください。