刀剣×情報系 刀剣自由研究展

刀剣×情報系Webオンリーイベント刀剣自由研究展の企画ページです。

情報系まとめ作成者に聞く!(vol14:未夏雨翠様)

お名前

未夏雨翠

出している本/ネップリの主な傾向やコンセプトを教えてください(刀の調査/刀以外の調査/旅行記 等)

広く浅く一振りについて調べた『刀剣話譚』のシリーズとして小竜景光大般若長光について本にまとめました。調べ物は鎌倉~室町の長船と正宗十哲あたりがメインです。旅行も好きなので、最近は刀剣と旅行を絡めたアンソロの主催もしました。

あなたのテーマ周辺で、浅く広く系のおすすめ本をMAX5冊くらいまで教えてください

・『備前刀-日本刀の王者-』(岡山文庫)概略はだいたいこの本を見ればいいと思います。
・『備前刀剣王国』(図録)写真と押形があって特徴的な刃文を理解しやすいです。
・あとは刀剣の大きい特別展に行くと大体一振りくらい長船の刀の展示はあるので図録を参考にするのが一番です。

あなたの調べているテーマに該当する、深くコアな内容のおすすめ本をMAX5冊くらいまで教えてください

・『長船町史 刀剣編通史』周辺の歴史まで含めてなぜ長船の地で刀剣がここまで数多く作られたのかなど、発掘調査も踏まえた詳しい内容です。
・『長船町史 刀剣編図録/資料』記念銘とか写真とかここまでまとまっていることは中々ない本です。
・『岡山県歴史人物事典』中身よりは存在が珍しいほうになると思いますが、地元の人から見たという要素(主観)も大きくこれはこれで面白いと思います。
・『相州伝名作集』今までの長船の流れからは外れますが、相州伝や正宗十哲の刀が好きなら読んで損はないです。短刀は原寸、それ以外もかなり大判での押形と写真の掲載があります。

調査を始めたきっかけを教えてください

元々歴史好きから武将が所持する刀剣について調べていたのが始まりです。
調査対象が長船の刀に集約されていったのは織田信長が好きで所持刀剣に多かったこと、東博で見た丁子の刃文が気に入ったからです。

(ネット公開/ネップリ/本など形を問わず)発信したきっかけをおしえてください

Twitterは自分のメモ、備忘録程度。
本にしたのは一度は同人誌にしてみたかったので、自分の近況も考えて決断しました。

集めた資料はどんな感じで管理していますか?(保管およびインデックスつけ等)

冊子体はサイズごと→内容ごと、図録に分けての保管。
複写資料はあとで引用できるように書籍情報もメモして、内容ごとに分けてドキュメントファイルに入れてファイルケースに。量が多いのでファイルのタイトルは「大般若長光」「奥平家」「織田信長」「信長所持刀剣出典」「津田遠江長光」「長光重要文化財」「長光・刀工」などかなり細かくつけています。
各資料のタイトルや出版年など基本情報、複写したページをExcelに細かくまとめてクラウド上で管理。データをクラウドに挙げておくことで図書館などでも見返して同じ資料を間違えて複数回複写することを防ぎます。(まとめる前には何度かやらかしたので徹底しています)

鑑賞した時の自分の感想はTwitterにつぶやくかWordにまとめるかはしておきます。

本を作るときのざっくり手順やスケジュール感、こだわり等々を教えてください

①調べていてある程度資料が集まる
②本にしたいと思う
③出るイベントを決めて申し込む(半年前くらい)
④章や節を作る
⑤書く
⑥足りないところを調べる
⑦5と6を繰り返す
⑧印刷所の締め切りを見て焦りだす(イベント1月前くらい)
⑨表紙を作る・目次などのデザインも組む
⑩売り子の友人に急かされ始める
⑪できたところの校正をしつつ書く(徹夜し始める・イベント2週間前くらい)
(⑫委託書店に申し込んで退路を断つ)
⑬締切日の早朝くらいに完成する

いつもギリギリなので悪い例です。
早くから資料を集めているのに⑤~⑦で脱線して時間がかかります。

冊数は予算の兼ね合いでアンケートをしたことはありません印刷代がすべて。
2、3年くらいはあってもいいかなと思って刷っておきます。

本の加工が好きなので相性を考えながらデザインは作ります。こだわりだし、本にするという過程では一番楽しいです。

(本)初めて本を作ったときに困ったことと、どんなふうに解決したかを教えてください

年表を入れたり家系図を入れたり、文字以外も多かったのでその部分で苦労しました。年表や表はExcelで作って挿入、家系図は画像にしてしまった方が棒がずれないので見やすいです。
でもどちらかといえばデータが重すぎて締切2週間前に直近1か月分くらいの作業が丸々飛んだ2冊目のほうが苦労しました。こまめなバックアップは大事です。

(本)印刷所選びの基準を教えてください

締切がゆっくり・安い・好きな加工ができる
いつも予定が読めないので締切がゆっくりでかつ安いことは必須条件です。
最初は岡山生まれのの刀の本を作るので岡山にある印刷会社さんに頼みたいというマニアックさも併せてBRO'Sさんにしました。締切が緩い割に安く、工程が細かくマイページで更新されるのが楽しくてその後も愛用しています。
大般若の本は金インクを使いたいのと少部数オフセットも安価だったことからサンライズさんです。

(本)印刷所用の原稿を作るとき、表紙と本文それぞれどのようなソフトを使用していますか?

本文・Word、Excel、ClipStudio Paint ex
表紙・ClipStudio Paint ex
どちらも元々持っていたので、それぞれを使った同人誌の作り方を調べて参考にしています。

あなたの資料の探し方を教えてください

日本刀大百科事典→参考文献
展示があった図録→参考文献
CiNiiArticlesで関連の単語を片っ端から入れて読む→読んだ論文の参考文献
『美術作品レファレンス事典 刀剣・甲冑・武家美術』は文化財登録が無い刀も写真が載った本とか調べられるので便利。『東洋日本古美術文献目録』は刀剣雑誌論文までそれなりにタイトルが出ていて調べやすいです。

持ち主についてなら
国語辞典・百科事典→国史大辞典ほか歴史系事典→引用→引用文献著者のほかの図書・論文
関連する日記、書状、出身地域の県史や市史
有名でない人物ならWikipediaの参考資料の本からたどることも。

史料についてはジャパンサーチで古い順にするとお手軽に本文へたどり着けます。

図書館のOPACと参考文献を調べつくしたらデータベースや新聞を辿ります。
上記ので一通り戦ってからGoogle書籍検索をします。

資料の探し方について『レファレンスブックス 選び方・使い方』『日本史を学ぶための図書館活用術』などプロが系統立てて書いた書籍も参考にしています。後者は紙の辞書からデータベースまで取り上げられており、更に持ち主についてだけでなく刀剣名を入れても検索できるものも多いので重宝しています。

とりあえず参考文献とレファレンスブックス、最終的にはプロに聞く。

近現代の人物について扱った、あるいは扱いを検討したことはありますか?ある場合、どのような配慮をしましたか?

扱う際は日本史の教科書に準じます。ただし明治大正はともかく、昭和の戦後は個人情報につながる可能性も大きいので扱わないです。

伝承がたどりきれなかったとき:資料をたどっていって、一旦行き止まりになったときにどうしますか?

資料を読み返す。
辿り着いたところまでで一区切り、調べられなかったと素直に本に書きました。

重要な資料の存在を教えてくれた方などはいますか?まとめる上で特別な扱いや事前のお話などしましたか?

Twitterでならば大体が本の形になってから作ってましたとつぶやいているので、まとめる前に誰かに教えてもらったことはないですね。

マイナスの印象を与えるようなテーマを扱うか検討したことはありますか?どのように対応しましたか?

マイナスの方向性によって扱いは変えます。それぞれ持ち主がいらっしゃるので、歴史人物の評価を下げかねないことは自分の中に留めておいて、伝承と史実が違って夢が壊れる方向のものは普通に扱います。史実と、こんな伝承もあると分けて書く感じで。

信頼性の低いネタは扱いますか? 扱う場合には何か気をつけていることなどはありますか?

伝承があったのも刀の歴史の一つと考えて、信頼性が低いことも記載したうえで取り扱います。できるだけ多くの本に当たってからより現代に近い専門家(小笠原先生とか渡辺先生とか)の本も踏まえて検討します。諸説があるものも各説を踏まえて考えます。

調べてみたら予想と違ってびっくり!となったことがあればおしえてください

戦前と戦後で同じ刀剣についてなのに全く書き方が変わってくること。

まとめたことで、何か得たもの、あるいは起こった出来事、思わぬ反応などありましたら教えてください

1)大学生なので各課題の論文を出す際に自分の本と似たような内容で出したこともあり、誤魔化しきれずに書いている本がばれました。他にも色々……。でも授業で来ていた某館学芸員さんに本名や所属とPNと本を結びつけて覚えられているのが一番怖い。

2)よかったのは人脈が広がったことです。

3)1冊本を作ってもっと本が作りたくなりました

何か補足だったり、語りたいことがあればどうぞ

自分が折角学生の内なので、学生の方に向けて
公立図書館ところはもちろんのこと学校の図書館もフル活用したらいいと思います。高校の時も意外と司書の方に聞いたら埃被った本が出てくるなど発見がありました。大学図書館は言わずともがな。
あと刀剣はもちろんのこと、歴史や日本美術全般や彫物関連から宗教、成り立ちを考えたら化学、古文漢文崩し字他諸々関わりがある分野も多いですし、視野を広げて学んでいると後でより深い情報にたどり着けます。もっと勉強しておけばよかったとつくづく思わされるのが調べものだと思います。時間があるうちこそチャンス。

これから調査してみる/まとめを作ってみる方に向けて一言!

「推しについて知りたい!」が一番の原動力になると思うので、好きなところを見つけたらいいと思います。